Ⅰ 研 究 主 題

集団や社会との関わりの中で、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、よりよく生きようとする生徒を育てる道徳の時間はどうあればよいか。
〜 授業力の向上を目指して 〜

Ⅱ 主題設定の趣旨

  2011年3月の東日本大震災は、多くの人々の命を奪い、広大な地域の自然や町並みをそれまでとは異なるものに変えてしまった。当たり前にあった家族や地域の絆を断たれ、固有の文化や自然の恩恵 を失い、私たちはその大切さを身にしみて感じることとなった。災害の様子は国内外に伝えられ、様々な地域から被災地に向けての援助や励ましがあった。さらに、災害時においても失われない日本人の秩序や団結力が高く評価され、復興に向けて、助け合い共に生きていこうとする意識が高まった。今、社会は、大震災を契機に人と人との絆が見直される社会へと変わりつつあるといえる。
  一方で、私たちはそのような変化の中においても、社会には憂慮すべき事象がたくさんあることも認識している。震災の前から、自殺者の増加が話題になり、「無縁社会」という言葉がよく聞かれた。日本の子どもたちの自己評価の低さが懸念されることもあった。自分に自信をもって積極的に生きていくためには、人と人とのつながりが大切であり、自分自身が社会を支える一員であろうとすることが社会全体をよりよくしていく力になるということに気付かされる。
  平成20年度に改訂された学習指導要領解説では、生徒の自然な道徳性の発達を阻害している現象として、1 社会全体のモラルの低下、2 家庭や地域の教育力の低下、3 社会体験、自然体験の不足、4 社会の変化に伴う様々な課題、があげられ、これらへの対応をいかに行うかを道徳教育の課題としている。
  そこで、これらの状況を受け、今後3年間は4の視点「主として集団や社会とのかかわりに関すること」を中心として研究を進めていきたい。
  教育全体の目標の基盤である学校における道徳教育の目標は、教育活動全体を通じて道徳性を養うこ ととされている。その要である「道徳の時間」の授業に焦点を当て、適切な指導を行うことができるように授業力の向上を目指したい。
  年間35回の道徳の授業で求められるのは、教師が生徒に対して道徳的価値を教え込むことではなく、生徒自身が自分で価値の自覚を深めるようにすることである。そのような授業を実現するには、生徒が登場人物になりきって考え、表現し、また、他人の考えを理解しようとすることが大切である。そこで、研究内容を下記のように段階的に設定した。各年度、基本には深い資料分析があることを念頭に置いて、授業力の向上を目指し、道徳の時間をこれまで以上に充実させるような研究を推進していきたい。
 
 平成24年度・・・資料分析による中心発問の設定と発問構成の吟味
 平成25年度・・・自分の考えを表現し、深め合う授業展開の工夫
 平成26年度・・・ねらいとする道徳的価値に深く迫ることのできる教材の選択と活用

Ⅲ 研究のねらいと内容

1 研究のねらい
  集団や社会とのかかわりの中で、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、 よりよく生きようとする生徒を育てるために、授業力の向上を目指した実践的研究を進める。
2 研究内容
  (1) 道徳教育推進教師を中心とした協力体制の充実と指導計画の工夫
  (2) 道徳的価値の自覚を深める指導を行うための授業力の向上
  (3) 指導に生かす評価の工夫

道徳部会 平成24年度研究計画

Ⅰ 研 究 主 題

 集団や社会との関わりの中で、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、よりよく生きようとする生徒を育てる道徳の時間はどうあればよいか。
〜  資料分析による中心発問の設定と発問構成の吟味  〜

Ⅱ 主題について

  平成23年度までは、学習指導要領の内容項目の2の視点「主として他の人とのかかわりに関すること」を中心として、自分の生き方を見つめ、豊かな人間性を育み、他とかかわり合いながらよりよく生きようとする生徒を育てるための道徳の時間の指導について研究を進めてきた。平成24年度からは、自分を取り巻く関係をさらに広げ発展させて、内容項目の4の視点「主として集団や社会とのかかわりに関すること」を中心として、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、よりよく生きようとする生徒を育てる道徳の時間の指導について研究する。
 平成23年度は副題「魅力的な教材の開発や活用」に焦点を当てて、研究を進めてきた。読み物資料を授業展開の中心に位置付け、それを効果的に生かすための補助的な教材の開発や活用をすることは道徳的価値に迫る手立てにつながった。研究から明らかになったことの中で特に注目すべきことは、読み物資料の魅力を十分引き出すためには深く資料分析をすることが重要であるということである。
 そこで今年度は、「資料分析による中心発問の設定と発問構成の吟味」を中心として実践的研究を進める。教師が道徳の時間で取り上げる資料を読み、授業のねらいに迫る中心発問をどのように設定するか、中心発問に至るまでの必然性のある発問をどう構成していくか、そのための資料分析をどのように行うかを考え、実践的研究を通して、授業力の向上を目指したい。
 道徳の授業で求められるのは、道徳的価値を教え込むことではなく、生徒が価値の自覚を深めるようにすることであり、生徒の心に響かせることである。まさに、教師が道徳的価値をどうとらえてどう授業を行っていくのかが問われていると考える。このことを踏まえ、資料分析の在り方を研究し、発問を吟味することを通して授業力の向上を目指したい。 

Ⅲ 研究内容とその視点

  集団や社会とのかかわりの中で、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、よりよく生き ようとする生徒を育てる道徳の時間について、実践的研究を進める。今年度は、4の視点「主として集 団や社会とのかかわりに関すること」を中心としながら、資料分析による中心発問の設定と発問構成の 吟味を通し、授業力の向上を目指して、次の視点から研究する。
 
  1 道徳教育推進教師を中心とした協力体制の整備と指導計画の工夫
   (1)校長の方針の下、道徳教育推進教師を中心として全教師による協力・指導体制を充実させる。
  (2)道徳の時間と各教科、特別活動、総合的な学習の時間、特に「社会に学ぶ『14歳の挑戦』」等の体   験活動と関連付けた年間の全体計画を工夫する。
  (3)各学校の生徒・家庭・地域の実態に応じて、指導内容の重点化を図る。
  (4)授業の公開や地域教材の開発等、保護者や地域の人々の積極的な参加が得られるよう工夫する。
  (5)学習したことが生徒の生活に生きて働くように、「心のノート」の活用を指導計画に位置付け       る。                                                                                
 2 道徳的価値の自覚を深める指導を行うための授業力の向上  
  (1)資料分析と発問の工夫
   ①教材分析の方法
  ・  資料の筋を追って、登場人物の心情や考え方の流れや変化を読み取る。
  ・  資料の中に道徳的価値がどのように含まれているか、明らかにする。
   ・  資料の中のねらいとする道徳的価値、及びそれに基づいた人間としての生き方を考えさせられる        ような場面について検討する。
  ②中心発問の設定
   ・  資料の中に含まれるねらいとする道徳的価値に、的確に迫るための中心発問を設定する。
   ・ 中心発問に対し、生徒がどのように感じたり考えたりするか、具体的に予測する。
  ・ 生徒が考えを深めることのできる中心発問が設定されているかを吟味する。
  ③発問構成の工夫
  ・  授業展開の段階について考え、ねらいに至るまでどのような順序で発問すれば効果的か検討する。
   ・  発問と発問とのかかわりを考えながら、ねらいと照らして必然性があるような発問を設定する。
  ・  導入や終末を含めて、発問構成を吟味する。
 (2)切り返し発問や意図的指名等の、生徒の考えを広め深め合う授業展開の工夫
    ・  資料との対話、他者との対話、そして自己との対話が深まるよう、生徒に考える時間を十分に与        え自分自身のものの見方、感じ方や考え方を言語化できるようにする。
   ・ 生徒が考えを揺さぶられたり、生徒相互の対話が深まったりするように切り返し発問を工夫する   こ   とで、よりねらいに迫る道徳的価値を引き出す。
   ・ 日頃から生徒の道徳性の実態を把握し、意図的指名を交えながら、一人一人の異なる考えを引き     出し、様々な価値に触れさせながら、互いに道徳的価値を深められるようにする。
   ・ 考えを深めるために、板書の構造化や教材・教具等の効果的な活用を工夫する。また、学校や学     級の実態、取り扱う内容に応じて学習形態を工夫する。
   ・  自分の考えを書いたり班で討論したりするなど、表現する機会を適切に設けることで、どの生徒   も   主体的に道徳的価値を言語化し、内面的に自覚できるようにする。
 3 指導に生かす評価の工夫
 (1)評価の方法
  ・ 生徒の道徳性について、観察法、面接法、質問紙法、作文や生活ノート等、それぞれの資料         収集方法の特徴を生かしながら、多面的、総合的な評価を行う。
  ・ 指導の前後における生徒の心の変容を様々な方法でとらえ、自らの指導を評価し、指導計画や指
    導方法の改善に役立てる。
(2)評価の留意点
  ・ 生徒一人一人の道徳性の評価とともに、学級や学年の集団としての成長の姿を評価し、指導に生
   かすように努める。
   ・ 道徳性理解のための資料は、生徒のプライバシーにかかわる内容を含んでおり、その収集の仕方    や収集した資料は慎重に扱う必要がある。           

Ⅳ 研 究 方 法

  1  研究主題を主体的に受け止め、各学校で日々の実践活動を通して主題の解明に努める。
   2   各学校での実践資料や成果等を持ち寄り、各郡市、地区で研究を深める。
   3   各郡市、地区ごとに研究の視点を明確にし、研究授業、研究協議を通して、指導法の実践的研
      究を進め、主題の解明に生かす。
   4  各郡市、地区の研究結果を踏まえ、互いに情報を交換し、次年度以降の研究に生かす。

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