集団や社会とのかかわりの中で、人間としての生き方を見つめ、共に豊かな心を育み、よりよく生き ようとする生徒を育てる道徳の時間について、実践的研究を進める。今年度は、4の視点「主として集 団や社会とのかかわりに関すること」を中心としながら、資料分析による中心発問の設定と発問構成の 吟味を通し、授業力の向上を目指して、次の視点から研究する。
1 道徳教育推進教師を中心とした協力体制の整備と指導計画の工夫
(1)校長の方針の下、道徳教育推進教師を中心として全教師による協力・指導体制を充実させる。
(2)道徳の時間と各教科、特別活動、総合的な学習の時間、特に「社会に学ぶ『14歳の挑戦』」等の体 験活動と関連付けた年間の全体計画を工夫する。
(3)各学校の生徒・家庭・地域の実態に応じて、指導内容の重点化を図る。
(4)授業の公開や地域教材の開発等、保護者や地域の人々の積極的な参加が得られるよう工夫する。
(5)学習したことが生徒の生活に生きて働くように、「心のノート」の活用を指導計画に位置付け る。
2 道徳的価値の自覚を深める指導を行うための授業力の向上
(1)資料分析と発問の工夫
①教材分析の方法
・ 資料の筋を追って、登場人物の心情や考え方の流れや変化を読み取る。
・ 資料の中に道徳的価値がどのように含まれているか、明らかにする。
・ 資料の中のねらいとする道徳的価値、及びそれに基づいた人間としての生き方を考えさせられる ような場面について検討する。
②中心発問の設定
・ 資料の中に含まれるねらいとする道徳的価値に、的確に迫るための中心発問を設定する。
・ 中心発問に対し、生徒がどのように感じたり考えたりするか、具体的に予測する。
・ 生徒が考えを深めることのできる中心発問が設定されているかを吟味する。
③発問構成の工夫
・ 授業展開の段階について考え、ねらいに至るまでどのような順序で発問すれば効果的か検討する。
・ 発問と発問とのかかわりを考えながら、ねらいと照らして必然性があるような発問を設定する。
・ 導入や終末を含めて、発問構成を吟味する。
(2)切り返し発問や意図的指名等の、生徒の考えを広め深め合う授業展開の工夫
・ 資料との対話、他者との対話、そして自己との対話が深まるよう、生徒に考える時間を十分に与 え自分自身のものの見方、感じ方や考え方を言語化できるようにする。
・ 生徒が考えを揺さぶられたり、生徒相互の対話が深まったりするように切り返し発問を工夫する こ とで、よりねらいに迫る道徳的価値を引き出す。
・ 日頃から生徒の道徳性の実態を把握し、意図的指名を交えながら、一人一人の異なる考えを引き 出し、様々な価値に触れさせながら、互いに道徳的価値を深められるようにする。
・ 考えを深めるために、板書の構造化や教材・教具等の効果的な活用を工夫する。また、学校や学 級の実態、取り扱う内容に応じて学習形態を工夫する。
・ 自分の考えを書いたり班で討論したりするなど、表現する機会を適切に設けることで、どの生徒 も 主体的に道徳的価値を言語化し、内面的に自覚できるようにする。
3 指導に生かす評価の工夫
(1)評価の方法
・ 生徒の道徳性について、観察法、面接法、質問紙法、作文や生活ノート等、それぞれの資料 収集方法の特徴を生かしながら、多面的、総合的な評価を行う。
・ 指導の前後における生徒の心の変容を様々な方法でとらえ、自らの指導を評価し、指導計画や指
導方法の改善に役立てる。
(2)評価の留意点
・ 生徒一人一人の道徳性の評価とともに、学級や学年の集団としての成長の姿を評価し、指導に生
かすように努める。
・ 道徳性理解のための資料は、生徒のプライバシーにかかわる内容を含んでおり、その収集の仕方 や収集した資料は慎重に扱う必要がある。